お部屋の清掃が終わりました、ごゆっくりお過ごしください。

お部屋の清掃が終わりました、ごゆっくりお過ごしください。



  どのくらい前でしょうか、日本の何処かのホテルで撮影されたメッセージカードです。中国語圏の観光客がカメラを手に取りたくなるほど刺激的だったのです。

  ここの中国語だけでなく、英語を見ても、観光後進国のような気がして、恥ずかしいです。そして「日本人もいい加減だね~」なんて言われると、胸の内は穏やかでいられません。

  メッセージカードにある最初の一言は流石に多用されているし、言葉の含みがないので、英語、中国語のいずれもストレートに、機械翻訳でちゃんと意味が合っていました。ラッキーですね~問題はその次です。

  英語と見比べれば解りますが、もともとの日本語は「お部屋の清掃が終りました、ごゆっくりお過ごしください」と推測できます。それを英語に機械翻訳したのでしょう、「I」 が主語になっていて、「spend it relaxing」・・・・・・の意味が解りません。せめて「Have a relaxing time」にして欲しいですけど、そのあれ?と思わせるような機械翻訳英語を、また中国語へ機械翻訳したようです。

  名付けて「雪だるま式機械誤訳」、長っ、「雪だるま誤訳」ですね、言うてもあまり縮められませんでしたw

  結果、中国語の「我是打扫房间,慢慢的,请留下来。」を日本語に戻すと、「私はルームクリーニングです、ごゆっくり、お残り下さい。」となっています。えっ?あり得ない中国語ですが、「お残り下さい」はちょっと恐くないですか。

  英語はまだマシなので、見れば意味を理解できます。それで中国語の部分は何を言いたいのか、理解した瞬間から大笑いですよ。

  「ごゆっくりお過ごしください」はかなり日本的な表現である事を説明させて下さい。日本人は普段の激務や都会の喧騒から逃れた先が温泉街の旅館なら、ぴったりくるメッセージです。

  しかし海外へ旅行する場合はどうですか、殆どはショッピング・観光や体験など目的を持って出かけますので、「良い経験が出来れば、良い思い出になればいいね」、「楽しん思い出を作って」と声を掛けます。それは英語圏も、中国語圏も同じです。

  国外の旅行者向け一般的に「Please enjoy your stay.」と言います。ここで「ごゆっくりお過ごしください」を中国語に直訳すると、「请慢慢休息」または「请好好休息」になり、ちょっと文化的違和感がありませんか。

  日本の「ごゆっくりお過ごしください」は単純に挨拶と化していて、伝えたいのは「折角はるばる日本に来て、忘れられない思い深い旅行になればいいな、楽しめたらいいな、思いのまま過ごせますように」と言う事で、そう言う意味では英語の「Please enjoy your stay.」に近いメッセージがグッと来ます。

  そこで、正しく中国語で表現するなら、
房内已打扫卫生,祝旅游愉快

  また、より「ごゆっくり」に近く、お寛ぎ・お楽しみ下さいの意味がある中国語表現、★が付くホテルで使われる事が多い場合、
已完成清洁卫生,请舒适享受

  クリーニングは一般的に動詞の「打扫」+名詞の「卫生」ですが、これを除菌なども含めてプロフェッショナルの業務として扱うのなら、作業名としての「清洁卫生」の方がワンランク上の表現と感じられます。

  「完成」は終了状態を表します。最初の部分はお部屋の中国語「房间」があっても無くてもいいですが、前半と後半の言葉のボリュームバランスを考慮するなら省略した方がすっきりします。

  中国語の「舒适享受」は施設環境に対しての寛ぎ・楽しむ事であり、「ごゆっくり」は行動に対する表現であるので、外国人からしてみれば、どう過ごそうかはこっちの自由じゃないか、となりかねません。

  中国語の表現はかなり豊かなので、他にも言い方が沢山あり、「こう言うべきでは?」と人それぞれあると思います。キリがないので代表的な表現を2つ例にあげました。

  今回の言いたい事は、文化の違いがあるのに直訳すると、本当の気持ちまでは伝わらない事もあると言う事です。ちゃんとしたサービスなら、中国語はプロの翻訳にお任せ下さい。今回の場合は英語も頼んだ方がいい気がします。

  以前の投稿である「靴を脱いでお上がり下さい」に書いた、中国のネットで言われた言葉があります。「広くて深い中国語の文字をそう簡単に扱えるか?!」この言い方が問題だとは思いますが、確かに、中国語は深みがある言語体系であり、今の機械翻訳では中国語を扱えません。翻訳依頼するほどでもない一言なら、筆者の管理するNOTEサークルにぜひお入りください。中国語関係のサポートを致します。


Popular Posts

Recent Posts

Powered by Blogger.